イカセカイβ.1

Anthropology of Inklings

歌は世につれ世は歌につれ
時代を超えて語り継ぎたいがある


Splatoonのイカ語を解読したりマップの外側や世界観を考察したり
開発中なので常識の範囲で好きに使ってね。
開発の流れではデータ消えたりもするのであらかじめご了承願います

めも くコ:彡相談事とか要望、ネタはここに自由に書いてね もしくは@ikasekai

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イカ研究

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塩辛悪夢

著:

(ここは…?)
夕焼けが団地を黄昏に染めている時刻
ホタルちゃんはブランコに座っていた
シオカラーズの衣装を着たままなぜ公園に?アオリちゃんは?
混乱する頭をおさえて辺りを見回す
(ここは…ヒラメガオカじゃない…)
滑り台やシーソー、そして撤去されたはずの回転遊具をみて気付く
(むかし住んでた団地だ…)

落ち着こうとしたはずがかえって頭を悩ませる
ハイカラシティからシオカラ地方は車で半日はかかる
さっきまで控え室に居たはずの自分がここに来れるはずがない
それに今は安全基準により全国的に撤去されたはずの遊具が目の前にある
自分は夢を見てるに違いない
そう結論付けた時だった

ガサリッ
全く気配を感じなかったところに突如起きた背後の物音にホタルちゃんはビクッとした
カサリ カサリ
何が近づいてくる草むらを警戒するホタルちゃん
カサリ カサリ
「novー」
なにこれ

「novー」
なに…この…なに?
ぱっと見の印象はノヴァブラスターだ
でも手足と顔がついてる
「novー」
…とりあえず危害を加えてくるような気配はなさそうだ
「novー」
手が届きそうな距離まで近づいてしゃがみこんでいる
この奇怪な生き物を見るに、やはり自分は夢を見ているのだろう

いつの間にか空は暗くなり1人と1匹は古い街灯の明かりの下にいた
「良い加減目を覚ましてくれないかね自分は」
novはいつの間にか寝ていた
(さてどうするか)
この人の気配の無いリアルな夢の中でどうすべきか?
とりあえず自分の旧家に行ってみるか
それともお爺ちゃん家かアオリちゃんの家を目指すか
計画を頭に巡らせてるとバツンッ!と音を立てて街灯が消えた

急に暗くなり面食らった
真っ暗闇になる前に行動に移そうと立ち上がった時だった
ミチッ…ブチッミチチッ…ゴポポッ
ビニールテープを無理やり引き千切った音と排水溝から空気の漏れるような音が近くからした
「n、n…nnno・vvVv」
先ほどのような可愛げのある鳴き声とは違い耳障りな音を発していた

後ろ脚をバタつかせ、前脚(腕?)を顎の下辺りの発射口の縁を掴んでせわしなく毟っているようだ
顔に血管が浮きあがり変色するnovから目を離さずに後ずさりする
最初に遭遇したときよりも躰は2倍くらい大きくなっているように見える
痙攣させながらポンプで空気を送られているかのように少しずつ膨張を続けている
逃げよう
そう決断したときだった


『「■゛■゛■■■■■■■■■■■!!!!」』
地響きとけたたましい雄叫びを天に響きわたらせながらnovは辺りにインクと腐臭を撒き散らしながら数倍の巨軀へと変貌した
茫然としつつ身体は逃げようと脚を後ろへと動かす
(ヤバいあれは明らかにヤバい)
上を仰いでいた怪物が 前に向き直り生気のない眼でホタルちゃんを"視"た
ホタルちゃんが走り出したのがあと一歩遅ければ怪物に長いに腕に掴まれていただろう
あの巨体には似つかわしくないスピードで追いかけてくるが、全速力で走るホタルちゃんの方が速い

何度か曲がり角を経て怪物の追跡を免れ人1人通れそうな路地に入り込み身を隠す
土地勘が通用したお陰で走り抜けることができた
バクバクと脈打つ心臓を鎮めながら状況を整理する
あの怪物は明らかにこちらを認識して敵意を向けてきた
なぜ?わからない
タコの侵略?秘密裏に進んでる和睦は順調だし彼らは機械を弄るのは得意でも生体はからきしなはず
とにかくどうする?戦うにも護身用の小型銃は持ってるけどとても通用するとは思えない
もしここが過去の世界なら自分の部屋にお爺ちゃんから預かったヒーローチャージャーがあるはず

来た道を少し戻ることになるが他に選択肢はあるまい
あのバケモノが入って来れないような経路を───
ポタッ
数メートル先にインクの染みが出来た
反射的に上をみる

居た



『「■゛■゛■■■■■■■■■■■!!!!」』
眼があったと思うとあの咆哮を叫び細長い腕をこちらへと伸ばし振り回してくる
ここは団地の物置とポンプ室の間に出来た子どもの使う小道
しゃがみ込んでいたのでギリギリ届かないようだが、もし気付かずに立ち上がっていたら首をへし折られていたかもしれない
今度は取り乱さずに対峙する
バケモノは待ち伏せする事は出来ても道具を使う知能はないようだ
振り回してる間に雨水管が外れたが、それを利用して殴りかかるってくる様子はない


そしてこの状況でなら試せることがある
『「■゛■゛■■■■■■■■■■■!!!!」』
けたたましい咆哮をよそに体から護身銃を取り出す
単発式のワカバのような性能しかない
落ち着いてインクを充填する
『「■゛■゛■■■■■■■!!!!」
これで倒せるとは思えない
『「■゛■■■ッ!■■■■■!!!!」』
虚ろな顔の光のない眼に照準を合わせ、トリガーを引く


『『『■゛◾︎゛■゛■゛■゛■゛■゛■゛ッ゛!!!!』』』
インクが溢れる左目を押さえてバケモノは立ち去った
小さく息を吐くとすぐさま立ち上がり計画したルートへと足を進める
古い団地にあとからポンプ室や変電所や防災倉庫を増築したお陰で小道やショートカットは多い
アオリちゃんとかくれんぼしたお陰だなと楽しい記憶を思い出して冷え切った心がじんわりと温かくなるのを感じた
さっさと悪夢を終わらそう


護身銃を片手に周り警戒しながら足を進める
もう少しで自分が住んでいた団地の棟に着く
不気味なくらい音のしないおかげでバケモノが物を破壊する音も聞くことができた
物陰から物陰へと体を移し、棟の自転車置場の裏に身を隠す
自分の家は13階団地の7階の角部屋だ
エレベーターを使うとバケモノが音に反応しかねないし、なにより着いた先で遭遇したら逃げ場がない
階段は見張らし良くするため壁は胸の辺りまでしかないが心許ないが、幸いなことに角部屋は階段から近い
意を決して頭を低くしながらコンクリ造の階段に足をかける


ガシャンガシャン ガシャン
遠くでカラの一斗缶が倒れる音がした
来る途中に見つけて並べておいて正解だった
ここからの距離は…そう遠くはないがすぐに近付かれはしないだろう
低い姿勢のまま階段を駆け上がる
手すりから頭が出ないよう腰を低くして、踊り場から踊り場へと夜闇への警戒をしつつ音を立てないように駆け上る


カツンカツンカツンカツン…
5階まで上がってきて周期的な音がしていることに気付く
近づいてきてる…ような音ではない、気がする
階段に伏せてイカフォンのカメラだけを廊下に出して確認する
画面に映るのは蛍光灯に照らされた廊下だけだ
少しずつ頭を出して周囲を伺う
カツンカツンカツンカツン…
音の出所を探る
…雨水管だ
雨水管に強い力が加わり留め具が一部外れて左右に揺れている音だ
間違いない
あのバケモノがよじ登ってきている


自分の居場所がバレたのか?
それとも偶然近くを通ってるだけなのか
階段の踊り場に身を潜めている間は雨水管のルートから見えないだろうがコチラからも相手の様子が掴めない
どうしても上の階への踊り場までの階段は廊下に向けて背中を見せることになり身を隠すことができない
焦って駆け上がって物音を立てれば自分の居場所を知らせるだけだ
かといって忍足で階段を登っていていたら丸出しだ


カツンカツンカツンカツン…
廊下から降る階段に寝そべってイカフォン少しだけ出す
雨水管の軋む音が大きくなるとカメラ越しに巨体が通り過ぎる姿を垣間見ることができた
どうやらコチラには気付いていないようだ
雨水管の揺れる音はまだ周期的に続き遠のいていく
このまま屋上まで登るつもりだろうか?